平成16年11月6・7日の両日、 和歌山マリーナシティの多目的ホール「WAVE」にて開催されました 「第14回和歌山技能フェスティバル」造園部門に出品いたしました。 わずか二日間の展示でしたが、5万人の来場者に見て頂くことができました。

出品作品 ― 熊野古道高野「祈りの道」―

「わかやま技能フェスティバル造園部門」

当日配布パンフレットの全文

配布パンフレットの解説図

担  当 : 和歌山県造園建設業協会 伊都橋本支部

デザイン : 山本 聰洋

施  工 : 有限会社 山 本 園

[作者の一言]

本年、熊野・高野山を中心とした和歌山県の多くの市町村にまたがる地域が「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産登録されました。「祈りの道」また「すくいの道」として世界的な評価をいただいた事は、一県民としても大変よろこばしく光栄な事と受け止めると共に、故郷和歌山のこの無形有形の財産を大切にしてゆかねばとも感じております。

今回、特にテーマを強く設定して作庭に望んだわけではないのですが、高野山在住の私が作庭する事となったのも、何かのご縁と思い、「高野山にいたる山の辺、祈りの道、すくいの道」の風景を意識しつつ、現代日本人が近頃ともすれば陥りがちな、「行き過ぎた便利の追求」や「経済性合理性一辺倒」の無味乾燥の日常とは、出来るだけ無縁の世界を表現できればいいなと思い作庭に臨みました。 現代日本人が忘れかけようとしている「大切な何か」を、少しでも感じていただくことができれば、さいわいです。

アルバム ALBUM

制作出展閑話

PRODUCE

毎年11月の第一週の土日開催されてきた「和歌山技能フェスティバル」。今年は、ながらく県下産業を苦しめる不況風を吹き飛ばし、元気を取り戻そうと、別に独立して開催されてきた「和歌山県産品フェア」との相乗効果を計るため共同開催となり、「和歌山まるごとフェアー」と銘打って、「和歌山技能フェスティバル」も例年開催の地場産業センターから和歌山マリーナシティのウェーブへと場所を移しての開催となった。

当日は行楽シーズンの土日とあって、二日間で延べ五万人以上にのぼる大勢の来場者を集めての盛大なフェスティバル開催となった。昨年までの地場産業センターでのフェスティバル来場者は三千人前後、実に20倍に迫る来場者数で、参加県下25技能団体の各ブースもテンテコマイの嬉しい悲鳴あげる結果となった。

さて今年の造園ブースを担当する事とあいなって、時間的に11月に入れば本格的な出展準備に取り掛からねば間に合いません。通常の社業に追われる中、10月も残すところ1週間と迫り、お尻に火がついてきました。事前のご説明では、「会場総ブース数は技能フェスティバルが25、県産品フェアが室内60屋外30の全115ブース。造園は室内入口ま正面の最も目立つブースの割当。室内会場には85グループがゴッタ返す事が予想され、資材搬入搬出はきびしく時間制限され、造園は前日の8~11時搬入、解体搬出は7日16~19時厳守。」とのご指示。あらかじめ会場であるWAVEを下見にのぞくと、日中の室内会場はオレンジテント屋根越しのためか、自然光とは違い異様に赤みを帯びた雰囲気、床は全面コンクリート舗装で、間口4.5m奥行2.7mわずか3.75坪、車一台の駐車スペースとほぼ同じサイズの割当ブースである。おまけに諸事情から助成金は一切無く、企業名宣伝広告もだめ・・・ときている。

泣きたく成る程、難儀な条件である。しかし事ここに至っては、放り出す訳にもいかない。プロとして、中途半端にお茶を濁したマヤカシものを多くの人の目に触れさせる訳にはいかない。もうここまで来たら後には引けないのである。 匠の技今回の「技能フェスティバル」のサブタイトルである。ガーデニング系やエクステリア系では「匠の技」はチト苦しい。「和」の線でいこう、それもこれ見よがしな技巧は鼻に付く、据えましたヨといったピカピカ灯篭も下品、室内コンクリ床では本格石組は無理、高野山から行くのだから、どこかにそれを感じさせたい・・・。色んなテーマやらイメージが 頭の中に浮かんでは消えてく。このモヤモヤとした時間、いつもの産みの苦しみの時間、またこれが作庭の捨てがたい楽しみひとときでもある。混沌とした状態が、とある瞬間パチンと弾け秩序を持ち始める。テーマやらイメージが決まってくと、あとはどう「表現」し「匠の技」と「空間編集力」で味付けすれば生き生きと輝きをもつかである。